入院手術

当院では、耳、鼻、のどの疾患に対する手術療法として、以下の手術を行っています。

鼓室形成術

慢性中耳炎や真珠種性中耳炎の患者様を対象に行う手術療法です。これは感染症による炎症や耳漏といった症状を抑えるようにするほか、炎症によって崩れた鼓室(鼓膜や耳小骨)を再建することで難聴を改善するという内容になります。なお鼓膜を再建する場合は、患者様ご自身の耳の上部にある側頭筋という筋膜を使うほか、耳小骨の再建も患者様ご自身の耳介にある軟骨をベースにして修復していきます。

鼓膜閉鎖術

トラフェルミン(遺伝子組み換え)製剤を使用して穿孔鼓膜を閉鎖、再生します。

鼓膜形成術

慢性中耳炎や耳に何らかの外傷を受けたことによって、鼓膜の穴が開いたままで塞がらなくなって、それによる炎症などが見られていない場合に行われる手術が鼓膜形成術です。穴が開いたままでも、それほどの痛みはありませんが、聞こえが悪い、炎症が中耳で起きやすいといったことがあるので、これらを改善するために行いますが、同手術の対象となるのは、鼓室には異常がみられず、鼓膜の穴を塞ぐことで聴力の改善が見込めるという患者様になります。手術時は、まず新しい鼓膜を作る材料として、患者様の耳の後ろの皮下組織を切開して採取します。これは鼓膜に開いている穴(穿孔)を塞ぐために用います。なお塞ぐ際は、手術用の糊で接着します。局所麻酔で手術を行い、入院は1泊程度で済みますが、その後1ヵ月程度は通院していただきます。

アブミ骨手術

アブミ骨とは耳小骨(ツチ骨、キヌタ骨)のひとつで、これは鼓膜で捉えられた音の振動を増幅させて内耳に伝える役割があります。このアブミ骨の動きが悪くなってしまうと、いわゆるアンプのような働きができなくなってしまい、振動が内耳に伝わりにくくなって難聴の症状をきたすようになります。このアブミ骨の動きが悪くなる病気を耳硬化症と言います。つまりアブミ骨手術は、耳硬化症の患者様に行われる手術です。

アブミ骨手術は、動きが悪く固くなってしまったアブミ骨を摘出し、新しいアブミ骨(人工の耳小骨)に置換していきます。置換の際は、耳の穴付近を切開していくので傷痕が目立つことはありません。

鼻茸摘出術

鼻茸とは鼻ポリープとも呼ばれるもので、鼻腔の粘膜がブヨブヨと茸状にふくれている状態のものを言います。これは慢性副鼻腔炎(蓄膿症)を発症するとよく見受けられる病状のひとつですが、ポリープは良性でがん化することはありません。ただ鼻茸が大きくなって、鼻づまりがひどくなると鼻茸を切除する手術が検討されます。

鼻茸摘出術は局所麻酔下にて行われ、鼻茸のブヨブヨとした箇所を切除します。入院する場合でも1泊2日程度で済みます。

内視鏡下副鼻腔手術

慢性副鼻腔炎(蓄膿症)や鼻茸による鼻づまりや鼻汁といった症状を解消するために行われるものです。副鼻腔の慢性的な炎症によって、もはや薬物療法だけでは改善しない場合に検討されるのが内視鏡下副鼻腔手術です。全身麻酔の時もあれば局所麻酔下で行われることもあります。

手術時は、内視鏡を鼻の穴の入口から挿入していき、内視鏡に搭載されているCCDカメラが撮影している映像を医師がモニタを見ながら鼻茸を内視鏡に搭載されている鉗子もしくはマイクロデブリッターという機器で除去していきます。同手術は、副鼻腔炎の多くが鼻の中で起きること、また内視鏡の小型化などの機能向上が図られたことで可能となりました。当院ではナビゲーションシステムを使用し、手術を行いますので、より安全に手術が可能です。従来の手術と違って侵襲が少なくて済むので、入院期間も3泊4日程度となっています。なお手術時間につきましては、片側で30~60分ほどになります。

下鼻甲介手術

これは肥大化した下鼻甲介の粘膜下組織を機器を使用し削り、除去する手術です。
鼻閉の改善を目的としていることから鼻中隔弯曲症の患者様によく用いられる手術です。

鼻中隔矯正術

主に鼻中隔弯曲症の患者様を対象とした手術で、曲がってしまっている鼻中隔の軟骨や骨を真っすぐに矯正することで、強い鼻づまり、鼻血が出やすい、もっぱら口呼吸である、といった症状を解消させるほか、味覚・嗅覚の改善も図られるようになります。

手術は局所麻酔下で行います。その内容ですが、鼻の穴の入口から1cmほどの箇所を切開して、鼻づまりなどの症状を引き起こしている軟骨や骨を取り除くなどします。その際に鼻の粘膜が腫れていることもあるので、これを切除することもあります。なお手術によって鼻腔に痕は残るようになりますが、傷が治癒していくと外から見ただけではわかりにくいです。手術時間は20分程度です。なお入院する場合の期間は1泊2日程度です。

口蓋扁桃摘出術

口蓋扁桃は一般的には扁桃腺と呼ばれています。これは幼少の頃はウイルスや細菌といった病原体の侵入を阻む組織として働きますが、成長するにあたって同器官は縮小し、その役割を終えるようになります。ただ人によっては、この口蓋扁桃が小さくならずに大きいままということがあります。このような状態は度々扁桃炎にかかりやすくなります(年に4回発症すると慢性扁桃炎)ので、口蓋扁桃摘出術が検討されるようになります。このほか、睡眠時無呼吸症候群の患者様なども対象となります。

手術については全身麻酔下で行い、開口器で口を開けてコブレーターで口蓋扁桃を摘出し、出血に関してはコブレーターで止めていきます。手術時間は1時間程度ですが、3泊4日入院する必要があります。また術後の咽頭の痛みはコブレーター使用によって抑えられます。

アデノイド切除術

咽頭扁桃とも呼ばれ、鼻の奥の突き当りの上咽頭の位置にあります。ここは鼻呼吸時の通り道になることからアデノイドが肥大化すると鼻づまりによって鼻呼吸が困難になる、急性副鼻腔炎、急性中耳炎のほか、睡眠時無呼吸症候群を起こしやすくなります。アデノイドは10歳を過ぎる頃には小さくなっていくのですが、肥大化が治まらない、症状が強いという場合は手術による切除が必要になります。同手術は幼児~学童期に行われることが多いです。

手術時は全身麻酔下で行われ、口腔からアデノイドを切除する専用のメスを使用し、出血に注意しながら切除をしていきます。手術時間は15分程度で済みますが、扁桃腺も同時に切除という場合は1時間程度かかります。

軟口蓋形成術

軟口蓋とは口蓋の一部で硬口蓋の奥に位置し、飲食時に鼻腔などに食物が入らないように鼻腔とつながっている通路を塞ぐという役割があります。ただこの軟口蓋は、いびきや睡眠時無呼吸症候群に悩まれている患者様にとっては部分的に取り除く必要があって、その一部を切り取ることで気道を広げることで上記のような症状が改善されるようになります。ちなみにいびきや睡眠時無呼吸症候群を改善させる手術療法には、鼻中隔矯正術、扁桃摘出術などがありますが、よく行われる手術療法は軟口蓋形成術です。

声帯ポリープ切除術

声帯にポリープが発生し、声がかすれるなどの症状がある際に検討される手術が声帯ポリープ切除術です。

手術は全身麻酔下で行われ、喉頭直達鏡という金属の筒状のものを口へと挿入していきます。その管から顕微鏡を通してポリープの様子を確認し、切除していきます。小さくて見づらいものは患部を拡大して取り除くようにします。手術時間は20分ほどで終了し、入院期間は1泊2日程度です。術後は、声をできるだけ出さない沈黙療法を1週間程度行います。